2018年10月10日水曜日

三びきのやぎのがらがらどんの特異性 あるいは野蛮な民話の多様性

三びきのやぎのがらがらどん
時は19世紀、グリム兄弟によるメルヘン選集に影響を受けたノルウェーの詩人ペテル・クリスティン・アスビョーンセンは、同じように自国の民話を収集、編纂しNorske Folkeeventyr(ノルウェー伝承冒険譚)という一冊の本にまとめた。その中の一篇にDe tre Bukkene Bruse, som skulde gaae til Sæters og gjøre sig fedeという物語がある。直訳すると三匹の雄山羊ブルース 脂肪を蓄える為に牧草地へ行く といった感じか。

三びきのやぎのがらがらどんは今日、日本語で読めるこの民話の最も有名なバージョンだと思われる。元々アメリカで1957年に出版された絵本の翻訳版で、1965年の初版から半世紀以上も販売される大ベストセラーとなっている。多くの日本人にとって三匹の山羊の寓話とは、すなわちこのがらがらどんを指すと言って過言でない。しかし、我々が~がらがらどんを回顧した時に真っ先に話題にあがるのはその残酷な暴力描写である。

バーナード嬢曰く
臓物を辺りにまき散らして死ぬ事をビデオゲームの俗語でGibbingという。
Giblet(モツ)から転じた言葉でマチュア向けコンテンツの花形的表現と言えよう。
施川ユウキの漫画バーナード嬢曰く(1巻 第11話)で本作が取り上げられた際も、タイトルのイメージから草食動物の山羊が協力し知恵を絞って困難に立ち向かう話だと思い込んでいたが、強力な個の力が暴力を暴力で打破する荒涼とした物語であり愕然としたという旨が絶妙な筆致で描かれている。

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