Thought Criminalsとはオーストラリアで70年代後半から80年代前半に活躍した77KBD Punkの雄だ。彼らは2005年頃にディスコグラフィーがリリースされた事で今では広く認知されているが、同時期にデビューしたScientistsなんかに比べると活動期間が短かった事もあって長い間、知名度の低いバンドだったと思う。そんな彼らのデビュー作7インチはA面がHilton Bomberという当時シドニーのヒルトンホテルで実際に起きた爆破テロ事件についての歌で、B面はI Won't Payという、これまたあまりにも明け透けな内容の歌だ。
I won't pay for Punk Records
俺はパンクのレコードにお金を払いたくないよ…そんな一種呪詛めいた言葉を気の抜けた危なげな演奏に乗せて歌唱している。ストレートなパンクではなく彼らはその影響下のニューウェーブに分類されたりするが細かい事はここでは気にしない。ともかく、僕はそんな「俺はパンクのレコードに金を払いたくない」と表明するパンクのレコードを40豪ドルほどである日買ったのだった。
どんなに好きなものだって、今、喉から手が出るほど欲しくてたまらなかったとしても、できればそれにお金を払わずに手に入れたい。実際のところ、カモみたいな客だとか、なんでこんなもんをこいつは欲しがるんだろうなんて、店主から僕は馬鹿にされてるかもしれない。それでも本当の事を言えば、僕だって1銭もお金を払いたくないよ。
バンド名のソゥトクリミナルズとはすなわち思想犯を意味する。お金を払いたくないよという歌詞は一種のカルチャージャミングを目的としたメッセージである。
ビアフラが貧乏人を中性子爆弾で殺せ、これで犯罪率が下がるぞ!と歌ったのと同じだ。しかし、これらは無自覚に誰もが思わず口に出してしまう呪詛なのも事実だ。