2012年1月26日木曜日

LA Noire 雑感メモ1

PC版のリリースから間もなくセールを経て、今更になってプレイしてるわけだが、現在進行形のプレイ状態ながら既に書きたい事もたくさんあるし、思考をまとめる為にも思ったことなどインプレッションを雑感の形で今後メモしておこうと思う。


フェイシャルモーションについて

確かにポリゴン人形どもの表情筋は凄い。だが正直言って期待外れな要素であった。本作においてこの圧倒的なフェイシャルモーションが最大限に生かされるのはカットシーンとインタラクティブ尋問モードのクローズアップ映像になるのだが、どちらもプレイヤーの干渉できるアクションが少なすぎる。カットシーンは言わずもがなだが、とにかく尋問モードのインタラクティブ性が低すぎる。アクターの演技をスキャンして落とし込んだポリゴン人形の細かな表情の動き、瞬きの回数や一瞬目を逸らす動作から嘘を吐いているか否かを読み取るというシステムは良いが、その実体は完全リニアな質問内容を元に、質問に対する受け答えをカットシーンで流した後に、質問後の表情(間)が映されるのみである。

以上の情報からプレイヤーが出来ることは単純な3択(話した事を信じる/疑う/反証する)のみ。こんなものわざわざリアルタイムレンダする必要すら感じない、90年代の実写系インタラクティブADVとなんら変わらない手法なのだから、わざわざ3Dモデルに落とし込むなんて本末転倒もいい所だ。これが例えば、プレイヤーが相手の目を覗き込むアクションや、「それを俺の目を見ていえるか?」と拳銃を突きつけながら恫喝するといった、表情の変化を引き起こすアクション(プレイヤー介入)がリアルタイムに行えて、かつそれに伴って表情が細かく変化するといったインタラクティブ性があれば全く話は違った。

こんな事わざわざ言うのも野暮なのかも知れないが、実在のアクターを使って演技を撮影し、それを寸分違わぬ精巧な3Dモデルに落とし込むという事自体が果てしない回り道だ。しかしそれがゲームとして成立するのは仮想空間に落とし込んだ"それ"が、自由なカメラ移動といった此方からのアクションを受け入れているからに他ならない、プレイヤーが干渉できる(インタラクティブ性)からこそのビデオゲームである。全般的にLA Noireのカットシーンはカメラ移動の自由度すら許さないガッチガチの仕様になっている、これらは悪い意味での"映画的"演出といえよう。

「この画像を見て彼が嘘をついてるか、ついてないか2択で述べよ」
極端な話、フィーリングクイズに過ぎない尋問パート。
会話の駆け引きを表情の変化と合わせて楽しむというのが理想なのだ。



アニメーション/プロップなどの出来は抜群

表情の凄さはゲームのメカニクス的部分に全く組み込まれないものだったが、キャラクターの所作は素晴らしい。こんなに自然に階段を昇ったり下ったりできる3Dモデルを初めて見たかも知れない。犯人を追ってパイプ伝いにビルを昇っていたら、犯人に蹴飛ばされ地面に落下。起き上がってから落ちた帽子に近づいて拾い上げるといった細かな一挙動が丁寧に描かれる。フェイシャルモーションと違うのはこれらがプレイヤーの操作に対応してリアルタイムに映される所にある。

今更ここで書く必要も感じなかった所なのだが、まるまる40年代のアメリカの街がサンドボックスとして用意されたゲームでありながら、本作はGTAといった都市犯罪ゲームにみられるような遊び場としての街ではなく、リニアなディテクティブアドベンチャーゲームの舞台に過ぎない。極論を言えば、このゲームは90年代のADVに多く見られたプリレンダ背景でも構わない所を、実際にリアルタイムレンダフル3D空間にして、更には都市トラフィック、シチュエーションに応じたキャラクターの所作を実装しているのだ。LA Noireの本質はこの無駄な作りこみにある。だからTeam Bondiは90年代のプリレンダムービーと変わらないような手法のカットシーンをわざわざリアルタイムレンダするのだ。

街の中のゴミ箱、電灯、ベンチだって本当は必要すらないのだが、それらがダイナミックにぶっ壊れ、地面に叩きつけられた時の手ごたえあるサウンドの小気味良さは堪らない。本作のエンバイロメント系エフェクトの芸の細かさはGTA4を遥かに上回る。主人公が構えたフラッシュライトの光源でダイナミックに影が投影される様は感動的ですらあった。また後で書こうと思うが、40年代とは思えぬ超高性能さながら、柔らかなアメ旧車特有のサスの感覚を持つビークルといった良いとこ取りに虚実混ぜたデザインのバランス感覚は実にスマートである。

死体の接触判定に片足が乗った場合は膝を浮かせる芸の細かさ。
操作中のキャラクターのアニメーション一挙一動は目を見張るものがある。




次回はゲームメカニクスではなくストーリーテリングの構造や世界設計について書こうと思う。

2012年1月25日水曜日

2011年の注目PCタイトルを振り返る


White Gold: War in Paradise
VD的GoTYはこのWhite Gold(原題Xenus2)で決まりだ。北米リリースは2010年末、Gamers Gateなるオンラインデジタルディストリビューション専売のタイトルで、かつてAtariから北米でもリリースされたBoiling Pointの続編(原題Xenus)である。White Goldは元々2008年にCIS圏で発売されたタイトルで、開発元Deep Shadows(Codename Outbreak開発後、StalkerのGSCと分かれた片割れ)は長らくグローバル展開を望んでいたが、パブリッシャが決まらず宙ぶらりんになっていたらしく、英語版は満を持しての登場となった。

広大なカリブ海に浮かぶメキシコの美しい自然、そこに麻薬カルテル、軍隊、ゲリラ、蛮族、クッソ汚いCIA連中に異常に沸点が低くすぐ銃をぶっ放す市民らが大概好き勝手暴れる政治不安の第三世界を舞台にしたフリーローミングRPG/FPSのハイブリッド作品、前作同様、銃火器とビークルがフィーチャーされている。

Sin -罪- メモ


P&Aのリテール版Sinが出てきたので久しぶりに遊んでみようと思ったら動かない。一番最後にプレイしたのがAthlon XP3000+/Radeon 9800/SBAudigy2/WindowsXP SP1の環境で、その時は全くトラブルもなかったのだが、今回は起動の瞬間に止まってしまう、プレイ完全不可の重度のトラブル。

元々トラブルの多かったゲームでもあるし、環境の変化に伴い相性でどこかくすぶってるのか…(元がWin98のゲームだし)サッと諦めてしまえばいいものをしばらく悪戦苦闘してたので、もったいないから今回調べたことなどメモとして残しておきます。

ポストアポカリプスのおきて


少年と犬、あぁ何と素晴らしい響きだろうか、映像業界には昔から「困った時は子供と動物でウハウハザブーンじゃ」という素晴らしい言葉があります、この二つの要素をうまいこと引っ掛ければヒット間違いなし、時代を超えた普遍の超強力安牌です。どっこい子供と動物ほどコントロールが難しいものはないわけで、これは同時に、そう世の中うまくいかねぇよという戒めの言葉でもあるわけです。近年では「マルモのおきて」なるドラマがこの方程式に沿ってウハウハザブーンだったようですが、僕もまた例によって「このテレパス犬がマルモっていうの?え、安部サダヲがマルモ?外人役なの?この子役は?」なんて素っ頓狂なやりとりをして、周囲を呆れさせてやったワケですな。

鉄十字勲章の取り方



本日解禁されたRed Orchestra 2: Heroes of Stalingradのダウンロード待ちの間に、意識を高めるべくちゃちゃっと書く。

Saber Interactive ロシア人をコキ使ってA級ビデオゲームを作ろう!

Halo: Combat Evolved Anniversaryは、なかなか衝撃的なタイトルであった。
Xboxのローンチに登場したHaloは、Marathon2/Myth2を経て半ばBungie信者と化していた僕にとって、当時はとても面白いというピュアな感情と、その後のMSの展開に複雑な気持ちがあったものだが…結局荒んだ心は時間が癒してくれた。今なら素直に祝う事が出来るHalo10周年記念、その記念に産み落とされたカワイイあの子は腹違いの母親が生んだマーティンフライだったのさ。

HDリメイクと称して高解像度対応、リソース置き換えを行うのは昨今当たり前になったが、Halo: Combat Evolved Anniversaryは一味違う。リアルタイムにゲームの演算とグラフィックの演算が別で回転しており、プレイ中もワンボタンでモダンなハイファイグラフィックと2001年オリジナル風グラフィックを切り替えられる超変態仕様となっており、10年の技術の進歩をお手軽に実感できるとんでもない代物だ。


2分20秒くらいでグラフィック切り替えの実演が見れる
驚く事にゲーム中にリアルタイムでこれを行う事ができるのだ。


Bungie謹製初代Haloから完全に置き換えられたこの変態エンジン、Saber3Dを提供しているのがSaber Interactiveという会社だ。SaberはAndrey Iones、Anton Krupkin、Matthew Karchの3人を中心にアメリカはニュージャージーのミルバーンにて2000年ごろ設立されている。

素晴らしきかなARMA人生




ARMA LifeRPGがめちゃくちゃ面白い。
元のARMAと全く違う趣向のゲームだし、ルールも複雑、しかもプレイヤー同士のコミュニケーションドリブンな所があり、ネットのマルチプレイヤーゲームとしては相当気難しい気質なんだけど、一回やってみるとこれだけ人気なのがよく分かります。国内ではゲーム自体がホストされていないので、海外サーバで遊ぶ必要がある為ハードルは高いのですが…


詳しくはこの素晴らしい概要を読んでいただくといいかと思います
http://wikiwiki.jp/arma2/?MostPlayedOnline#uc6e9cdb (ARMA2wiki)

Razor1911 777の海を股に掛ける100年海賊

Razor 1911をご存知ですか?本当は知らない方が良いのかもしれませんが、彼らはスカンジナビアはノルウェーが誇る世界有数のWarez Crackチームであると同時に、世界有数のDemoチームです。なかなか日本では馴染みのない世界ですが、世の中にはこの手の犯罪者芸術集団みたいな連中が結構いるのです。そんな彼らの今回の仕事がこれです↓



Codemastersからリリースされた"商品"、F1 2011のクラックと美麗な64KB実行ファイル(64KB Intro)、いわゆるCracktroというやつで、プロテクトのかかった商用ゲームをクラックした自分たち自身の名前とその技術力を誇示するクラッカー署名の一種です。

これは1991年にRazor1911がクラックしたAmiga用ゲームBirds of PreyのCracktroに対するトリビュートとなっています、オリジナルは現在はチームを離れているRazor1911創始者の一人、Sector 9というメンバー(Birds of PreyのCracktroを作成した当時20歳、Razor1911の活動を始めたのは10代半ばという筋金入りのGeekクリミナル(笑))の作品で以下のものになります、こちらも64KB。

マリオカートをパクった男達 Wacky Wheels & Skunny Kart

前回のDopefish記事の際にほんの少し触れたWacky WheelsというDos用マリオカートクローンゲームについての誰得記事。90年代のUSオブスキュアインディペンデントゲーム開発会社の知られざる歴史ということで一つ。
Wacky Wheelsはスーパーマリオカートにインスピレーションを得たAndy Edwardson氏が…いやこの言い方はあまり正しくないな。Mode7に対する技術的興味(とあわよくばそれが金にならないかという思い)から、スーパーマリオカートを参考にAndy Edwardson氏が趣味の延長線上ではじめた個人的なプロジェクトでした。氏は当時Copysoftという低予算のPC用カートゥーンアクションゲームメーカーでの開発に従事しており、その合間を縫っての製作でしたが、数週間してエンジンの骨組みを一人で組み上げると、もう一人の中心開発者であるShaun Gadalla氏がグラフィックを用意しプロトタイプが完成します、これがWacky Kartです。


Mode7(スーファミの回転/拡大/縮小機能)がないPCで、オリジナルに近い高速描画を行っているのは実は凄い事なんですよ。

誰もが愛したクッソ汚い緑の害獣 Dopefish



They Live and We Sleep...


Dopefishをご存知ですか?もしあなたがFPSを愛してやまない往年のPCゲーマーであればきっとこのドギツい緑色をした出っ歯の魚自体か、"Dopefish Lives"のメッセージをどこかで見たことがあるかもしれません。一部で根強い人気を誇るこのハラペコクソ魚はid Softwareがかつてコンピュータ用にリリースした一連のビデオゲーム、Commander Keenシリーズの4作目で初めてお目見えとなりました。


小魚を囮にして食べさせるヤミー。

Starbreeze Machinegames スカンジナビアのカーマック


Starbreezeというビデオゲームデベロッパーをご存知でしょうか?ヴィン・ディーゼル主演の準カルト映画ピッチブラックに端を発した悪漢ヒーローリディック、その一連シリーズのビデオゲームスピンオフ作品「The Chronicles of Riddick: Escape from Butcher Bay(2004年作)」で一躍業界へ躍り出たスウェーデンの気鋭職人集団です。

初代Carmageddonを今の環境で遊ぶためのメモ

遂に復活したCarmageddonを祝福すべく、久しぶりに第一作をインストール。古いゲームのお約束で現在のマシンだとトラブルだらけで動かすだけでも一苦労、せっかくなので今回調べた事をメモとして残しておきます。

Max Payne2 さよならを言うのはわずかに死ぬ事だ

先日SteamにてMax Payneシリーズが75%OFF、今日のコーヒーとスナック菓子を我慢すれば買えるような値段で販売されていたので勢いあまって購入してしまった。特にこの2は個人的に非常に思い入れ深い作品であり、今更デジタル買いなおし(というかリテール版も所持しているので買い貯め)をしても惜しくない程のフェイバリットだ、以下ネタバレあり。

俺には口がないが叫ばなければならない



I have no mouth And I must scream.

95年リリースのPC向けポイントアンドクリックタイプのアドベンチャーゲーム。日本語版の発売はない為、おそらく日本においては相当マイナーな類のビデオゲームだと思う。タイトルで気付いた青背系の方もいるかもしれないが、これは「世界の中心で愛を叫んだけもの」で知られるSF作家ハーラン・エリスン氏の同名の短編小説(邦題:俺には口がない、それでも俺は叫ぶ)をモチーフとしたビデオゲームである。

Easy to Learn,but Difficult to Master!

先日ラマソフトのゲームが凄いという事をとある席で力説したので、こっちにもラマソフト及びその唯一の中心人物ことジェフ・ミンター氏の偉業を時系列を追って抜粋しよう!Youtube様々のおんぶ抱っこだけど。

氏のキャリアは80年代初めから始まっており、非アーケード出身者にしてはかなり古参な方である。氏はイギリスの生まれなので、はじめの頃はおのずとZX Spectrum(UKで大変シェアの大きかったホビーPCつーかマイコン、宿題の為に買うのだ!)向けビデオゲーム開発からスタートし、そのまま自然な流れでVCSやコモドール向けタイトルをコンスタントに製作していく。既に80年代のこの頃からなんだか常人と違うユニークなテイストの快作(怪作?)を世に多数送り出している。

初期の最も有名な作品は83年のコモドール64用タイトルAMCこと「Attack of the Mutant Camels」だろう、突然変異を起こした巨大ラクダを相手にDefenderのような宇宙飛行機がレーザー光線で戦うという突飛な内容だ。


スターウォーズの時にも書いたが、この頃はマシンスペックの都合もあって、黒バック(宇宙)に爆発音ノイズというデザインはビデオゲーム業界どこも同じなワケだが、ミュータントキャメルのユニークな存在に度肝を抜かれる。ジェフ・ミンターのデザインのベースである偶蹄目(ぐうていもく)フェチが強烈に自己主張する奇跡の一品。

ugh