2012年1月25日水曜日

Starbreeze Machinegames スカンジナビアのカーマック


Starbreezeというビデオゲームデベロッパーをご存知でしょうか?ヴィン・ディーゼル主演の準カルト映画ピッチブラックに端を発した悪漢ヒーローリディック、その一連シリーズのビデオゲームスピンオフ作品「The Chronicles of Riddick: Escape from Butcher Bay(2004年作)」で一躍業界へ躍り出たスウェーデンの気鋭職人集団です。



The Chronicles of Riddick: Escape from Butcher Bay(以下EfBB)についてはPCゲーム道場青龍氏による総合レビューがあるので、目を通していただくと良いでしょう。この作品が高く評価された所をざっくり書きますと、リディックの映画タイアップ企画という所謂版権キャラゲーであったにも関わらず、グラフィックの美しさ、バラエティに富んだゲームプレイ、キャラゲーらしくちゃんとキャラの立ったストーリーライン、それら各要素を丁寧にまとめた手腕でしょうか。また独自エンジンで一から作られたという点も業界的に開発ベースのレベルの高さを見せつけたと言えましょう。僕個人が最も驚いたのも、やはりグラフィックの美しさであり、全体のオブジェクトは角張った一種幾何学的なデザインなのですが、ノーマルマッピングによる凹凸表現を効果的に用いた(Starbreezeはこのテクスチャによるアートディレクションのセンスがずば抜けている)画面は、居住空間の雑然とした風景や、ひんやりとしたメタルな質感、キューブリックを彷彿とさせる後半のロケーションなどレベルが非常に高いです。



上が実際のゲームプレイ。全体的にマップのポリゴン頂点数は少なく、曲線のあるオブジェクトは人物などにほぼ限られている事が分かる。そのかわりに、光源と影生成、テクスチャによる擬似凹凸が効果的に用いられている為画面はリッチ。またポリゴンの頂点数が少ないという事はその分パフォーマンスを稼げるというわけだ。インタラクト時など、カメラが自然に三人称になるのもセンスが良い。



サイロピラミッドのアートディレクションは特に徹底している。


以下Starbreeze作品の羅列



Starbreeze処女作「Enclave(2002年作)」
最初からマルチプラットフォームでのリリース、この頃から既に独自エンジンによる開発である。温かみのある光源、テクスチャ芸で見せる画作りなど、その後の片鱗が既に伺えるが、アニメーションなど稚拙さも目立つオブスキュアな作風。



2作目「Knights of the Temple(2003年作)」
日本では後にライブドアからPC日本語版がリリースされたが、北米圏のパブリッシャが見つからず、スカンジナビアを中心とした欧州でのリリースのみとなった作品。2も出ているが製作は別会社。Enclaveとは打って変わって地に足のついた重量感のあるアニメーションで、大分垢抜けた剣技アクションに仕上がっている、これもマルチプラットフォーム。



4作目「The Darkness(2007年作)」
はじめにEfBBを書いてしまったので順番がおかしくなってしまったが、Vivendi(Sierra)の買収問題後2kと組んでリリースされた版権モノFPS。EfBBにもあった会話ADVパートを多分に含むゲームで、シューティングパートだけでなく恋人とダラダラしたりする事でキャラクタの堀り下げをさせる独特なゲームのテンポが特徴。光と影をテーマにしたヴィジュアル、キャラクター性の高さなどStarbreezeとしてはリディックの延長線上的な仕事となったと言えよう。



5作目はThe Chronicles of Riddick: Escape from Butcher Bayの続編兼リメイクとなる「The Chronicles of Riddick: Assault on Dark Athena(2009年作)」、グラフィックは大幅にグレードアップしたのですが、そこにはもうVogueことMagnus Högdahl氏はいませんでした。



Starbreezeを語る上で切っても離せない人物に、スウェーデンのジョン・カーマックことMagnus Högdahl氏がいます、彼について少し書きましょう。

以上のStarbreeze作品のエンジンなど技術的部分を支えたのがMagnus Högdahl氏です。彼の名前は一般には殆ど知れ渡っていませんが、スカンジナビアを代表するデモシーン/3Dグラフィック製作技術の伝説的人物です。氏のキャリアはTritonというデモチームのコーダーとしてスタートし、彼らはQuakeが世に出る前の95年にInto The Shadowsというデモをリリースしています。この美しい3D空間は当時相当なインパクトがあったようですが、Future Clewのようにすぐさま商業的展開(出資を募ってそのまま会社化)には至らなかったようです。Tritonは2001年になって地元スウェーデンのO3 Gamesに取り込まれる形でStarbreezeを出発させました。


この頃から剣技アクションをやりたかったようだ。


Magnus Högdahl氏は2009年にStarbreezeを退社、新たに何人かのメンバーを連れてMachinegamesという新会社を立ち上げました。現在StarbreezeがEAと組んで開発しているとされるSyndicate新作がMagnus氏の脱退によってどうなってしまうのか心配な所ではあります。一方のMachinegamesはZenimaxに買収され、idの新世代(id Tech5)エンジンを用いた新作を開発しているとされています、スウェーデンのジョン・カーマックと謳われた氏は今idと組んでいるのです。

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