2012年1月25日水曜日

ポストアポカリプスのおきて


少年と犬、あぁ何と素晴らしい響きだろうか、映像業界には昔から「困った時は子供と動物でウハウハザブーンじゃ」という素晴らしい言葉があります、この二つの要素をうまいこと引っ掛ければヒット間違いなし、時代を超えた普遍の超強力安牌です。どっこい子供と動物ほどコントロールが難しいものはないわけで、これは同時に、そう世の中うまくいかねぇよという戒めの言葉でもあるわけです。近年では「マルモのおきて」なるドラマがこの方程式に沿ってウハウハザブーンだったようですが、僕もまた例によって「このテレパス犬がマルモっていうの?え、安部サダヲがマルモ?外人役なの?この子役は?」なんて素っ頓狂なやりとりをして、周囲を呆れさせてやったワケですな。





「少年と犬(原題:A Boy And His Dog)」は残念ながら、そんなウハウハザブーンな結果には決してならなかったが、ボンクラ達の心に強く残る実に印象的な作品です。主演は若き日のドン・ジョンソン…といっても既に少年と言うには厳しい(当時25歳)ヴィジュアルであるがまぁ少年だと言うのだから少年なのでしょう。監督はペキンパーに愛された男LQジョーンズ、まぁ正直言ってペキンパーの足元にも及ばぬオブスキュアB級映画なのだが、下地となるバイオレンス基調はペキンパーイズムを継承していると言ってやってもまぁ罰は当たらないでしょう。原作はハーラン・エリスンの同名の短編で、前に書いたおれには口がない~はやや入手しづらかったのですが、こちらはコモンな「世界の中心で愛を叫んだけもの」に収録されてるので入手は比較的簡単です。






物語の 舞台はいわゆるポストアポカリプス(終末後/世紀末)、核戦争の後、文明は崩壊し、地表は砂漠に覆われたという定番のもので、放射能の影響で女が激減し男だらけ、水と食料それに武器が稀少となり、略奪/殺人が蔓延る暗黒の時代である。主人公の少年Vicはライフル片手にテレパス犬Bloodと共にそんな荒廃した世界を生きる一人である。彼は決して聖人ではなく、この世界では一般的な快楽主義的な人間でありタフな一匹狼のレイダーだ。物語はある日Vicはレイダー集団に追われる少女を助けるところから始まる、といってもVicもちゃっかりレイプまがいの事をしちゃうんだから助けたというより獲物を掠め取って自分のものにしてやったと言う方が正しいのかもしれない。少女は、「自分はシェルターのような地下社会からやってきた、地下は地上と違って略奪のない平和な社会になっている」と言い残してVicを殴って消える。その時少女はセキュリティカードを落としたようで、それを手にしたVicはBloodを外に置いて件の地下社会の入り口へ入っていくのだった…


前半部の設定やアートワーク系のディレクションがマッドマックス2(The Road Warrior)によく似ていますが、こちらの方が6年早い(75年公開)のでパクったのはあっちです、こちらにはカッコいいビークルは出てきませんが。後半地下社会に入ってからは独裁者Overseerと反乱を企む若者達、そこに巻き込まれるマヌケのVicという流れになります。地下の人間は種ナシなので、地上の人間(Vic)をさらってきて 搾精器でザーメンを搾り取って35人の花嫁(ドレスを着て廊下で待機しているのがまた…)を妊娠させる、農夫ルックの監視/戦闘サイボーグなどこのパートもまた印象深い。最終的にあやうくザーメンだけたっぷり搾り取られて殺されそうだったVicは反乱に失敗した少女と共に地下から逃げ出します。こうして地上に一組のレイダーカップルが完成かと思いきや、地上には健気にご主人を待っていたハラぺこで瀕死のBloodがいるのです、そこでとったVicの行動とは…






暴力やセックスといった大人向けのテーマが描かれているのですが、ラストのVicの行動といい、どこか寓話的な不思議な印象を観る人に与えます。ブレインデッドを観たか観ないかでゾンビ観が変わるように、鑑賞後にポストアポカリプス観を変える一本と言っていいでしょう。またその後スピンオフとしてVic And Bloodというタイトルでグラフィックノベルシリーズが刊行されているようです。

ugh