2012年1月25日水曜日

鉄十字勲章の取り方



本日解禁されたRed Orchestra 2: Heroes of Stalingradのダウンロード待ちの間に、意識を高めるべくちゃちゃっと書く。



Cross of Iron(邦題:戦争のはらわた)は最後のアメリカ西部劇映画監督ことサム・ペキンパーによる異色の戦争映画です。舞台は末期のWW2東部戦線、登場人物はドイツの軍人達で、全編通して極限状態での彼らの「男の生き方」が描かれている。

主人公シュタイナー(Sgt Steiner)は数々の戦場を渡り歩いたベテランで、情に厚く、部下からの人望もあり、上官からも一目置かれている。しかし彼は名誉や出世などに一切関心がなく、誰にもおもねらない戦争の犬だ。そして、もう一人の主人公がシュトランスキ大尉、彼はシュタイナーと対称的な存在で、貴族出身のエリートだが熾烈な東部戦線の現場など知らぬ腰抜けで、しかも名誉や出世欲といった事にのみに動く人間なのだ、物語はそんなシュトランスキが「鉄十字勲章」欲しさだけにこの地へ赴任してくるところから始まる。

物語の大筋はこの2人を中心に進んでいく、絶えずロシア側からの砲撃が鳴り響くバンカー、明日を生きられるかも分からない戦友達の為に戦うシュタイナー、彼は時にロシア側の少年兵を匿ったりと軍の規律を犯してまで人としてあろうとする。対してシュトランスキは 鉄十字章にのみ固執し、その為に同胞を欺き、ついにはシュタイナー達を見殺しにする鬼畜だ。ロシアとドイツの戦いが舞台であるが、この映画は同じドイツの下士官と将校の対立構造となっている。

そして、ついには本来味方であるはずのシュトランスキの策により敵地の真ん中で孤立したシュタイナー小隊、這う這うの体で抜け出し基地へ帰るのだが…ラストはロシア側の最後の進行だ。シュタイナーが基地へ帰ろうとする中、同時進行でサブキャラクターである老将校ブラントは、「祖国の復興にはお前のような若者が必要なのだ」と言葉を告げ皮肉屋だか根は誠実な若い将校キーゼルを本国に帰す。最終局面、ブラントは自ら先頭へ立ち兵の指揮をとっているのが印象的だ。シュトランスキにより危うく殺されかけた当のシュタイナーは復讐に赴くのかと思いきやシュトランスキを連れ出してこの戦いへ繰り出す、これまでの緊張からつづくラスト5分の映像は非常に印象的で、悲惨であることは変わらないが、陰鬱なこれまでの流れから一転して爽快だ、シュタイナーの笑い声から暗転しスライドが映し出され映画は終わる。




シュタイナーそしてストランスキ、老将校と皮肉屋の若者、全編を通して描かれるのは「人としてのあり方」なんてのじゃなく、ペキンパー節ともいえるニヒリズムにあふれた、「男が憧れる、カッコいい男の生き方」だ。戦争映画であり、その悲惨さから反戦映画ともカテゴライズできる作品だが、根本はもっと分かりやすい普遍的なテーマなのである。つまり舞台となる戦争はフルメタルジャケット、地獄の黙示録(原作:闇の奥を考慮する)におけるベトナム戦争と同じようなものだと言えよう。現に今作は大して考証にはこだわっておらず、ドイツ軍は英語を喋るし、ペキンパーのディレクションなので当たり前とも言えるが、銃声等のサウンドエフェクトはFakeを使用している、前述の通り対立するのはロシアとドイツではなく、あくまで"同じドイツ軍という組織"の中での下士官と士官、テーマは原題鉄十字章が示す「名誉」、その欲望、本質を説いてる、最後にシュタイナーはストランスキに向けて「俺が鉄十字勲章(の取り方)を見せてやろう」と言い放つが、これは何にも置き換えられることだ。

ペキンパーは長年「おもねらぬ」男の美学を描き続けてきた、刹那的な暴力のフィルタを通してだけでなく、ノンバイオレンスなジュニアボナーにしたってそうだったのだから、これはもう筋金入りってやつなのだが、 その中でも一番を選ぶならこの「戦争のはらわた」で間違いないだろう。

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