Halo: Combat Evolved Anniversaryは、なかなか衝撃的なタイトルであった。
Xboxのローンチに登場したHaloは、Marathon2/Myth2を経て半ばBungie信者と化していた僕にとって、当時はとても面白いというピュアな感情と、その後のMSの展開に複雑な気持ちがあったものだが…結局荒んだ心は時間が癒してくれた。今なら素直に祝う事が出来るHalo10周年記念、その記念に産み落とされたカワイイあの子は腹違いの母親が生んだマーティンフライだったのさ。
HDリメイクと称して高解像度対応、リソース置き換えを行うのは昨今当たり前になったが、Halo: Combat Evolved Anniversaryは一味違う。リアルタイムにゲームの演算とグラフィックの演算が別で回転しており、プレイ中もワンボタンでモダンなハイファイグラフィックと2001年オリジナル風グラフィックを切り替えられる超変態仕様となっており、10年の技術の進歩をお手軽に実感できるとんでもない代物だ。
2分20秒くらいでグラフィック切り替えの実演が見れる
驚く事にゲーム中にリアルタイムでこれを行う事ができるのだ。
Bungie謹製初代Haloから完全に置き換えられたこの変態エンジン、Saber3Dを提供しているのがSaber Interactiveという会社だ。SaberはAndrey Iones、Anton Krupkin、Matthew Karchの3人を中心にアメリカはニュージャージーのミルバーンにて2000年ごろ設立されている。
元々Matthew Karchという人はビデオゲーム畑の人間ではなかったそうだが、ロシア語に堪能であった事から、人件費の比較的安いロシアはサンクトペテルブルグに支社オフィスを設立、ロシアでゲームを開発しアメリカを中心にグローバルに売りさばくという画期的なアイデアを実行する。
近年ロシアや東欧CIS圏のPCゲーム、S.T.A.L.K.E.RやMetro2033などあちらの開発タイトルを北米圏の大手パブリッシャが販売したり、ロシア最大手ソフトウェア販売会社の1Cの欧米圏進出など猛威を振るっているが、それに先駆けての行動である、彼には確かに先見の明があったのだ!
E3 2011でTHQが大々的にトレイラーを公開したMetro Last Light
これも今、流行りの東欧産ですことよ。
ロシアの実働開発部隊の働きあってこそではあるのだが、このアメリカ本社によるマーケティング活動もなかなかの物であった。早い段階からATI、Nvidiaといったビデオカードメーカーに取り入り、2003年のデビュー作Will Rockは当時としては割かし早めだったDirect X9対応を大きく謳いタイアップをかける。
そして遂には北米/欧州のパブリッシャに大手UBIとの契約にこぎつけたのだ。パっと出のデベロッパとしては異例の大々的なデビューである。単なるロシアのPCゲーム開発会社だったらこう上手くはいくまい、ましてや2003年というロシア産ビデオゲームがまだまだ注目されていない時代である。こいつら結構なヤリ手だったのである。
しかしビデオカードのバンドル展開までしちゃって、華々しいデビューを飾ったWill Rockだったが、残念な事にゲーム自体は今をときめくCroteam社の大出世作Serious SamのRip-offみたいなものだったのだ、トホホ。僕の記憶では2004年には既に秋葉原の輸入ゲーム屋の店頭には見なくなっていた。
Will Rockのゲームプレイ、画は小奇麗だし、
ユニークな視覚効果が多くて、見た目は楽しい。
Will Rockのゲーマーによる評価はともかく、広く名前を売る事に成功したSaberは翌年2004年にAtariと次回作の販売契約を決め、順風満帆に見えた…が新作Time Shiftの開発は難航した。更には販売のAtariが財政難と来たもんだから大変だ、結局販売権はSierraに流れる事になるのだが、2006年に切羽詰ったAtariから出たデモ版は相当危なげな出来であった。
Sierraにて真に試される事になったSaberだったが、何とか完成させたTime Shiftは意外な展開となる。「これはあんまりイケてないけど、予算を出すからTime Shiftを最高のゲームにしようぜ!」SierraはTime Shiftの作り直しをSaberに持ちかけるのだった。
なかった事になったAtari時代のTime Shift
プレイアブルデモは一般に公開された。
デフォルメのきいたややコミック的なデザインからフォトリアリスティックでダークな雰囲気に変え、再出発したTime Shiftは当初のWindows/Xbox360にPS3を加えたフルマルチプラットフォームタイトルとして2007年にリリースされた。一時は倒産の危機すらあったというのに、紆余曲折の末、Saberはマルチプラットフォームのビッグタイトル開発を仕上げてみせたのだ。
実際に発売されたTime Shift、ガラっと雰囲気が変わった。
で、Saberに可能性を見出したSierraはその後、親会社がActivisionに買収され消えてなくなってしまうのがまた皮肉なのだが…これで更に名を挙げたSaberは今回のHalo: Combat Evolved Anniversaryの変態エンジン採用に至るというワケである。
最近は傘下の子会社が"ロサンゼルス決戦"の版権ゲームを開発したりもしているようだ。そしてSaberとしては5年ぶりの自社完全新作Inversionはバンダイナムコから来年2月にWindows/PS3/Xbox360のマルチプラットフォームで発売予定だ。
参考:
Saber Interactive (更新が止まってる?)
The Development Of A Continuum: Andrey Iones On TimeShifthttp://en.wikipedia.org/wiki/TimeShift (Wikipedia)
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