2018年6月20日水曜日

よいこのパンクロック講座 Randy The Band Punk Rock High 対訳と解説


スウェーデンの無節操パンクロッカーズ Randyが2005年にリリースしたアルバムRandy The Band(現時点でのラストアルバム)のオープニングナンバーPunk Rock Highの対訳と解説。つまり以下はロックンロールのネタバレなので真のロッカーはさっさと回れ右して、シールドを挿したらアンプのつまみを全て右に回せ、お前がかき鳴らしたそれだけが本当の初期衝動だ。

I went to punk rock high and the school of rock.
I got an electric guitar to compensate my small cock.
I got a high squeaky voice like a mouse in a can.
That's the way that I am.
ロック学校の高等部ではパンクロック科に行ったんだ
てめーの租チンをエレキギターで補おうってわけさ
後頭部に響くできゃー声でキャーキャー言われちゃってさ
まぁこんなもんってとこだな
I wore baggy clothes I was overweight.
Now I'm a blue fox punk because I watched what I ate.
Now I wear bondage pants just because I can.
That's the wau that I am.
前は太ってたし、ズタボロの服を着てた事もあったな
今じゃトゥインクなパンクスさ、食うもん考えてるからな
今はボンデージパンツさ、ピッチリ履けっからな
まぁこんなもんってとこだな
I was a popular guy at punk rock high.
At the school of rock I was cooler than the jocks.
The regular classes was nothing for me
But at gas stations across Europe I got a degree.
パンクロックハイじゃ有名人だった
ガッコのどのジョックどもよりカッコ良かったんだ
もう普通の授業は俺にゃなんの為にもならなかったんだ
あぁでも欧州サービスステーション縦断の単位は取っておいた
The boys and me got some history. We're a mystery.
We're still getting it on, writing our songs.
And we still do everything that we can sticking it
To the man.
俺とこいつらは沢山の物を過去にしたんだ、カッコいいだろ
俺達は今だってそうだ、ずっと曲も書き続けてるしな
俺達はどれも継続してる、あれをぶっこませるからな
I went to punk rock high and the school of rock.
And just like Bill Haley I rock around the clock.
I don't need a glass, I drink straight from the can.
That's the way that I am.
ロックスクールじゃパンクロックハイに行ったんだ
まるでビル・ヘイリーみたいに四六時中ロックをやった
俺にはグラスはいらない、そのままがぶ飲みすっからな
まぁこんなもんってとこだな
I was a popular guy at punk rock high.
At the school of rock I was cooler than the jocks.
At rock n roll university I got a doctors degree and a PhD
パンクロックハイじゃ有名人だった
ガッコのどのジョックどもよりカッコ良かったんだ
あぁロックンロール大学では博士号だって取ったさ。
The boys and me got some history. We're a mystery.
We're still getting it on, writing our songs.
And we still do everything that we can sticking it
To the man.
俺とこいつらには色ンな歴史があるんだ、隠微なのさ
俺達は今だってそうだ、ずっと曲も書き続けてるしな
俺達はどれも継続してる、あれをぶっこませるからな
Fred once said -man we must be misled.
There must be something better than a van as a bed.
I said we got to do all that we can sticking it to the man.
I said we got to do all that we can sticking it to the man.
ドラムの奴があるとき言ったんだ 俺たちは奴らを勘違いさせなきゃ-
-ホテルよりハイエースの方が寝心地がいいんだって事をさ
だから俺は言ったんだ、そのガセネタ刷り込むのが俺達の使命だって
俺は言ったんだ、そいつをぶちこむ為に俺達はやってきたんだって

この曲が2003年の映画School of Rockから着想を得ている事はすぐに分かるだろう。コーラス部のパンチラインstick(ing) it to the manは同作の台詞からの引用だ。元々Stick it up your ass(ケツにぶっこむぞという慣用句)のケツを倫理的な理由から省略した言い回しである事は自明の理だが、Punk Rock Highにおいてはその固定観念がRandyの秘密の隠れ蓑となっている。


ディテールの解説を始める前に、まず全体のおおまかなイメージを捉えよう。Randyはロック学校パンク高等学科に進み、デブった体をぴっちりとスリムにし、どんなリア充よりイケイケのモテモテになり大学に行って博士号まで取得、それから今日までずっと完璧なままなんだと僕らに吹聴する。ロジャー・コーマンのRock 'n' Roll High School、あるいはその影響下にあるSchool of Rockを更に発展させたような能天気でハッピーな甘いロックサクセスファンタジー像が一貫して提示されている…ように一見すると思える。

というのは最終節のエクステンドコーラスでその幻想に冷や水をぶっかけるからだ。Fred once said -man we must be misled~から始まる部分で、突然Fred(Ex-Fireside/Starmarket,Randyのdrums)は、「奴らが誤読するように仕向けよう」と言い出す。何を錯誤させるのかと言うと、「ベッドよりワゴン車の座席の方が寝心地が良いと勘違いさせる」のだと言う。これに対して恐らくStefan(Ex-Starmarket,Randyのgt/vox)自身が、「その思い違いを奴ら(僕らリスナー/ファン)に埋めつける為にこれまでやってきた」と返事をして曲は終わる。

これにより飄々としたいい加減な物言いの中でちらちらと窺わせた含みのある過去の言い回しが伏線となって生きてくる。普通の授業は無用だったが欧州サービスステーション走破の単位は取ったという軽口と併せて分かるのは、彼らがずっとワゴン車に自分達の楽器を積んで、車中泊しながら欧州大陸をツアーしたであろう事だ。点と点が繋がり、泥臭い映像がはっきりと豊かな情感を持って立体的に浮かび上がってくる。DescendentsのClean Sheetsという詞にもあるようにDIYパンクの弾丸ツアーバンドは滅多にキレイなシーツを敷いたベッドで寝たりはしない。ブックが決まれば自分達のバンを走らせて会場へ向かい、運が良ければその日は地元のバンドマンやサポーターの家で雑魚寝だ。


何週間、何か月も車中泊を続ける自分達をみて、どこかの呑気なオーディエンスがあぁ実はハイエースの座席ってのは思ってるより快適に眠る事ができるのかなと誤った認識をしたら傑作だ…これがRandyの歴史と秘密の誤読、HistoryとMysteryとMisledで韻を踏んでいる。

この曲が面白いのは曖昧な言葉や、抽象的な言い回しがあまりない事。更に荒唐無稽な話を平易な表現ではっきりと断言してくるので、パンクバンドという元々から過剰に演出された外的側面すら遠く離れて、この詩世界にだけ存在する架空のキャラクターとしてのPunk Rock High Randyというイメージが僅か90秒で受け手側の中に確立されていく。こうしてRandyというバンド/メンバーの実際の人となりと歌われる内容の齟齬がはっきりとした後では実在の人物であるFredの言葉に強い異化作用が働く。ふわふわとした大法螺の霧が急に冷まされると、目の前のイメージがクリアになり、挿し込まれた虚飾のない硬質な言葉だけが強い熱を帯びていた事が分かる。

ロックンロールに限らず、あらゆるエンターテイメントのむつかしさだと思うのだが、原始的なきらびやかで親しみのある楽しさが受け手の意識に到達し破裂するスピードと、思慮を要するメッセージが受け手の意識を変革する速度には著しい時差がある。だから突っ込んでやる!という抽象的な言葉を聞いても「チンポを/ケツに」と補完してくれるローレベルの下卑た意識が瞬時に働くのは仕方ない事だ。最初にCockとRockで踏んでる罠はちょっとずるい気がしないでもないが、彼らが本当に突っ込んだのは僕たちの無意識な固定観念に対してだ。

福祉の国スウェーデンというイメージが本当に正しいのか知らないが、ストックホルムのパンクバンドはインテリが多い、というか単純にバンドが多くてインテリも多い。Randyもあぁ見えて実は十数年間キャピタリズムやセクシズムの抑圧、マルクス主義の肯定をポップな音で歌いつづけてきたバンドだ。カナダのパンクバンドPropagandhiの影響は多分あると思う…なかったとしてもまぁ似たような政治性のフレバーが詩に含まれている。Punk Rock Highの中ではワゴン車の寝心地についてさと、はぐらかしてこそいるが、それ以外にも彼らがこれまでなにかしらの認識に変化を与えた事は間違いないはずなのだ…ジャック・ブラックとハリウッドの倫理観だとか。

Punk Rock Highはとても素敵だ。陳腐で大仰な作り話と安易に流行り物をパクった決め台詞はとてもキャッチーだし、同時に地に足のついたノンフィクションドキュメンタリーでもある。僕たちはなんてことない言葉遊びの認識変化を通じて、それでもやっぱり彼らが正真正銘のパンクロックヒーローである事を確信する。だから、もしパンクロックハイスクールで学ぶ事があるとすれば、誰も分かってくれないからこそ、そいつをじたばたやるべきだってことなんだ。
Do your parents know that you're Ramones?
 -From Rock 'n' Roll High School (1979)

ugh